経過措置を残置することに伴う競争上の問題を4.3で述べたが、内外無差別が実施されたことにより経過措置の履行に悪影響を及ぼす可能性もある。それに対応しようとした四国電力の事例を紹介する。監視等委は四国電力の対応を認めない判断を示したが、その根拠に説得力が不足していると思料する。

監視等委の確認項目では、内外無差別を評価する基準として「自社供給力から、常時バックアップ及びベースロード市場約定量等を除いた全量を相対卸に供出する等、自社小売向けに電源を確保していないことが確認できた」(太字筆者)ことを定めている。

四国電力は、2023年度向けの小売電気事業者向け卸売電力の公募において、同社小売部門の規制需要相当分について、供給義務の履行に必要な供給力を料金原価相当の価格水準であらかじめ確保することとしていた。これに対する監視等委の見解は次のとおりである。(監視等委、2023b、P27)

規制料金について、発電部門と小売部門が一体となっている事業者においては、両部門における原価を合算し、発販一体で総括原価に基づく料金設定が行われている。規制需要相当分について、社内取引価格がプライスベースであっても、あるいは、小売部門が社外から調達を行ったとしても、発販一体でとらえれば適正な費用回収は可能であり、規制料金が発販一体のコストベースで算出されていることをもって、規制需要相当分をコストベースで社内で確保する必要がある、とは言えない。ついては、この点に関しては合理的な理由なく、発電側が自社小売向けに電源を確保している事例に該当するのではないか。

出典 監視等委、2023b、P27(太字筆者)

この見解の中の「規制需要相当分について、(中略)小売部門が社外から調達を行ったとしても、発販一体でとらえれば適正な費用回収は可能」という認識は正しいかどうか、簡単な例をあげて確認してみる。

エリアが隣接する旧一電A社及びB社を仮定する。 A社及びB社の発電コストは、適正な事業報酬を含めてそれぞれ15円/kWh、20円/kWhであり、両社の規制料金の発電費相当部分もこれらと同水準に設定されている。