しかし、自由化以降も、需要家保護のための経過措置として、旧一電には低圧需要家に対する供給義務が課され、電気料金の水準も規制されている。そもそも法的独占が解除されたにもかかわらず、既存事業者に対して供給義務・料金規制が課され続けていることが妥当であるとは筆者は思わないが、この問題はここでは置いておくとして、経過措置であるのでいずれは解除されることが前提である。

解除の条件として次の3点が掲げられており(監視等委、2023a、P3)、これらを総合的に判断することとされている。

① 電力自由化の認知度やスイッチング(小売電気事業者の切替え)の動向など、消費者の状況 ② シェア5%以上の有力で独立した競争者が区域内に2者以上存在するかなど、競争圧力 ③ 電力調達の条件が大手電力小売部門と新電力との間で公平かなど、競争的環境の持続性

出典:監視等委、2023a、P3

現時点では、②の条件(シェア5%以上の有力で独立した競争者が区域内に2者以上存在)が満たされていないこと等を理由に、経過措置は解除されていない。法的独占の保証がなくなったのに、供給義務・料金規制が課されるという非合理な状態が8年以上も続いている。

そのような中で、監視等委による内外無差別促進の取り組みが始められ、直近のフォローアップでは、10エリア中6エリアで、現時点で内外無差別が担保されていると評価されている。監視等委では、これにより上記条件の③を満たしていると認めるとしているが、①及び②の条件も満たされなければ、経過措置は解除されない。

しかし、電力卸売の内外無差別が担保されている状況下で、供給義務が課されている旧一電とクリームスキミングが自由にできる新電力が競争すれば、新電力が有利なのは明らかである。これは電力小売市場において、監視等委が懸念しているものとは別の歪みが、制度に起因して発生していることを意味する。

今後監視等委が、②の条件で例示されている「シェア5%以上の有力で独立した競争者が区域内に2者以上存在」に拘泥し続ければ、現在の新規参入の状況から見てこの歪みは長期間継続してしまうだろう。