以下に、排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針を記した公正取引委員会(2009)を紹介する(P21~22の内容を筆者が要約した)。上で紹介した監視等委(2022)でも参照されている文書である。

●「排除型私的独占として独禁法上問題となり得る行為(排除行為)」とは; 供給先事業者が川下市場(この場合は電力小売市場)で事業活動を行うために必要な商品を供給する市場(この場合は卸電力市場)において,合理的な範囲を超えて,供給の拒絶,供給に係る商品の数量若しくは内容の制限又は供給の条件若しくは実施についての差別的な取扱い(以下「供給拒絶等」という。)を行うこと。

●「事業活動を行うために必要な商品(この場合は電気)」とは; 供給先事業者が川下市場で事業活動を行うに当たって他の商品では代替できない必須の商品であって,自ら投資,技術開発等を行うことにより同種の商品を新たに製造することが現実的に困難と認められるものであるか否かの観点から該当するかどうかが判断されるもの。

● 「合理的な範囲を超えた供給拒絶等」とは; 例えば,行為者が一部の供給先事業者に対して供給する川上市場における商品の価格が,他の供給先事業者との取引数量の相違等に基づく正当なコスト差を著しく超えて廉価(すなわち、不当廉売)となっている場合などを指す。

出典 公正取引委員会、2009

上記の指針に照らして、取引を事後監視することが独禁法の通常の運用である。監視等委による内外無差別に関する当初のモニタリングのアプローチも、不当廉売に該当する可能性のある事案を抽出し、事後監視するものであり、公正取引委員会(2009)と整合的である。

しかるに、現在適用されている評価基準は、再エネTFの影響を受け、大きく先鋭化したものとなっている。これについては、内容の面でも政策実行のガバナンスの面でも疑問がある。

まず、ガバナンスの面であるが、再エネTFは実態は当時の内閣府特命担当大臣の私的なTFであり、その会合は、本来「行政運営上の意見交換、懇談の場」以上のものではない。にもかかわらず、構成員が会合の場において具体的な論点について各省庁に対応を求めるなど、本来の権限を越えた運用が行われてきた問題が後になって指摘されている。