以下で順次紹介する。

4.1 地域密着性が希薄化する帰結 これは求められているのか

現在の電力システムでは、発電・卸売及び小売の分野は、自由な参入が可能な競争領域である。一般的に競争領域では、自社が有する競争力のある資源(この場合は発電所)を自社で優先的に活用して、競争優位を得ようとすることは当然のことである。

しかし、内外無差別が求められる世界では、これは「不当な内部補助」とされるとともに、監視等委(2022)では、旧一電等による自社小売部門優先の卸売を、自社シェアの維持または拡大を優先する薄利多売戦略と捉えている。

思うに、旧一電が自社小売部門を通じた自社電源の販売を優先していた理由は、シェア維持・拡大というより、地元密着の意識であろう。

理屈上は、小売自由化は電力小売について供給エリアの概念が消滅するものと言えそうであるが、旧一電には自由化後も自社エリアへの低廉な供給を優先するマインドを維持している会社が多い。これは、電源の立地地域において、地域の低廉安定な電力供給に貢献するならと迷惑施設が受け容れられてきた経緯がままあることから、自然なことである。

内外無差別を徹底させることは、旧一電に対してこうしたマインドを捨てるよう促すことである。そして、この政策を採った結果、全国の電気料金は、送電系統の制約が許す限りにおいて、全国平均値に収れんしていく。これは、これまで電気料金が安かったエリアの電気料金が上昇することを意味する。

国全体で見れば社会的厚生が増大するという説明はおそらく可能であろうが、当該地域の住民から見れば不利益である。少なくとも監視等委は、内外無差別政策を推進する立場として、このような結果を招来し得ることをアナウンスする必要はあると考える。また後述(4.5)するが、このことが円滑な電源立地に影響する可能性にも留意する必要があろう。

4.2 先鋭化した評価基準は適切か

監視等委は旧一電等によるコミットメントの実施状況をモニタリングするために当初採った方法は、2.2のとおり、「旧一電及びその関連会社によるエリアプライス以下での小売販売やエリアプライス以下で落札を行った公共入札案件が確認された場合に、各事業者によるコミットメントの実施状況を確認する」というものであった。このアプローチは、独禁法の通常の運用に照らして妥当である。