2024年6月に公表された最新のフォローアップでは、対象となる10エリア中6エリアで、現時点で内外無差別が担保されていると評価されている。内外無差別と評価されないことに対する罰則はないが、内外無差別が担保されていると評価されたエリアにおいては、経過措置料金(4.3参照)の解除の判断基準の1つである「競争環境の持続性」を満たしていると認められる 等の効果が生じるとされる。

  1. なぜコミットメントを要請したのか

    監視等委は、旧一電等に対して内外無差別な電力卸売を求める目的は一言で言えば、「旧一電等が発電設備の大宗を保有している中で、電源アクセスのイコール・フッティングを確保し、小売市場における競争を持続的に確保するため」とされる。より詳しくは、監視等委が再エネTFの会合で提示した資料(監視等委、2022)が参考になる。以下に一部を紹介する(P10~11から引用、太字は筆者による)。

    ● 2016年に小売が全面自由化され、卸電力取引所での取引が拡大し、相対取引による社外への卸供給も一定程度行われるようになったが、依然として、大手電力会社においては、取引所や新電力などの社外に卸売を行えばより高く売れる状況であっても、こうした比較・判断をせず、当然のように、自社小売から需要家への販売を優先しており、場合によっては、利益を伴わない販売価格で需要家に販売することで、シェアを拡大しようとする行動パターンに陥りがちであった。 (中略) ● 同質財である電気の販売において、安価な電源調達が極めて重要。多くの新電力では、競争力のある電源の保有・建設は容易ではないため、安価な電源を多く保有する大手電力会社が、自社小売部門を優遇し、取引所や新電力と比べて安価に卸供給を行うことは、競争上極めて不利であるとの懸念が指摘されるようになった。 ● しかしながら、独禁法において内外無差別を義務付ける規定はない。すなわち、独禁法においては、合理的範囲を超えた供給拒絶や差別的取扱い等でないならば、誰にどのような条件で商品を供給するかは基本的には事業者の自由であると整理されている。実際、一般的には、グループ内発電部門が(筆者追記:競争力のある)自社電源を確保した場合、同小売部門における販売価格が安くなることが当然のことと受け止められてきた。 (中略) ● こうした対応(筆者注:内外無差別な卸売のコミットメントを旧一電等から得たことを指す)により、大手電力会社は、同条件で社外へより高く卸売できる場合には、自社小売部門から需要家への販売をしないことを約することとなり、利益を伴わない販売価格で小売シェア拡大を図るのではなく、発電で適切に利益を確保することで全社利潤の最大化を図る行動を促すこととなる。 ● これは従来の前提を覆す画期的な取組。