監視等委が内外無差別な電力卸売を求めた経緯は次のとおりである。

2.1 旧一電等へのコミットメント要請

監視等委による内外無差別な電力卸売に向けた取り組みは、2020年7月に旧一電等各社に対して、次の①及び②のコミットメントを要請したことが端緒であった。

① 中長期的な観点を含め、発電から得られる利潤を最大化するという考え方に基づき、社内外・グループ内外の取引条件を合理的に判断し、内外無差別に電力卸売を行うこと ② 小売について、社内(グループ内)取引価格や非化石証書の購入分をコストとして適切に認識した上で小売取引の条件や価格を設定し、営業活動等を行うこと

出典:監視等委、2024、P6

2.2 監視等委によるモニタリング

上記要請に対し、全ての旧一電等がコミットメントを行う旨を表明したので、監視等委はその実施状況をモニタリングすることとした。

モニタリングの方法は、年2回程度実施される「小売市場重点モニタリング」による監視において、旧一電及びその関連会社によるエリアプライス以下での小売販売やエリアプライス以下で落札を行った公共入札案件が確認された場合に、各事業者によるコミットメントの実施状況を確認するというものであった(太字筆者)。

2.3 再エネTFの指摘を受けた実効性を高める取り組み(筆者から見れば先鋭化)

こうした中で、2020年度冬期に相当の期間に亘ってスポット市場価格が高騰する事象が発生した。監視等委の調査では、旧一電等による不当な行為は確認されなかったが、当時活動していた内閣府の再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(以下「再エネTF」)は、「支配的事業者による不当でない行為がこれをもたらすとすれば、より強力な競争促進策によって公正な競争環境を整備するしかない(再エネTF、2021、P6)」と指摘した。

この指摘を受けて、内外無差別な電力卸売の実効性を高めるための更なる措置が検討されることとなった。検討の結果、旧一電等に対して年2回、契約交渉のスケジュール、標準契約の整備、情報遮断等、31項目(正確には32項目であるが、32項目目は長期脱炭素電源オークションに関連したものであり、現時点では適用されない)について、監視等委が3段階で評価(フォローアップ)するという規制色の強いアプローチが採用され、現在に至っている。