日本の電力システムをめぐる環境は、ここ数年大きく変化している。具体的には;
電源の脱炭素化等に資本集約的な大規模投資を必要とすること にもかかわらず、GXに向けてどんな技術が主力になるかが不透明で、投資リスクが大きいこと 電力需要が増大することが想定されること 自然変動電源の拡大などにより、火力燃料調達の不確実性が増すこと
等が想定され、投資回収、コスト回収の予見性を高める政策が求められている状況にある。そのような中で、投資や燃料調達の不確実性を更に高める政策を並行して推進しているのは、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなちぐはぐさである。
世界各国・地域において電力システム改革の取り組みが始まったのは、電力需要の伸びも大きくなく、地域独占時代の貯金を食いつぶすことによって安定供給は何とか維持できる時期であった(米国カリフォルニア州などの例外はあったが)。
しかし、今や状況は大きく変わったので、電力システム改革の考え方自体を大きく変える必要性を筆者は感じている。同様に考えている海外の識者は、対案として、ハイブリッド市場という概念を提唱している。
ハイブリッド市場については、紙幅の制約から別稿(戸田、2024)に譲るが、日本でも長期脱炭素電源オークションが導入されたことで、ハイブリッド市場の適用が始まっている。その一方で、古い改革モデルに立脚した取り組みを継続するのは、時間と資源の浪費でしかなく、再考されることを望みたい。
【参考文献(本文での記載順)】
電力・ガス取引監視等委員会(2024)『内外無差別な卸売等のコミットメントに基づく評価の考え方(案)』 再生可能エネルギー規制総点検タスクフォース(2021)『容量市場、系統制約、スポット価格高騰の問題に対する意見』、第7回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース 会議資料6-1 電力・ガス取引監視等委員会(2022)『電力・ガス取引監視等委員会における取組について(発電情報公開、内外無差別な卸取引の実効性確保、グロス・ビディングの廃止、需給曲線の公開)』、第18回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース資料6-1 戸田直樹(2023)『限界費用玉出しのガイドライン化についての備忘メモ』 公正取引委員会(2009)『排除型指摘独占に係る独占禁止法上の指針』 電気新聞2024年9月20日1面 『監視等委・松村委員、燃調上限に「改善の余地」/規制料金撤廃は否定』(2024) 電力・ガス取引監視等委員会(2023a)『現時点における旧一般電気事業者の内外無差別な卸売の評価結果(案)等について』、第86回制度設計専門会合資料5 電力・ガス取引監視等委員会(2023b)『現時点における旧一般電気事業者の内外無差別な卸売の評価結果(案)等について』、第86回制度設計専門会合資料5 戸田直樹(2024)『EUと日本で適用が始まるハイブリッド市場ー転換期の認識を』
編集部より:この記事はU3イノベーションズの2024年12月15日のnote記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は U3イノベーションズのnoteをご覧ください。