さらに尹は、以上の様な公開された情報の再確認に続けて、「私が非常戒厳という厳重な決断を下すまで、これまで直接明らかにできなかった更に深刻なことがたくさんあった」として、非常戒厳で軍を真っ先に選挙管理委員会(選管)に向けた理由を述べる。
曰く、昨年の下半期に選管をはじめとする憲法機関や政府機関に対して北朝鮮によるハッキング攻撃があり、これを発見した国情院が情報流出と電算システムの安全性を点検しようしたが、選管は憲法機関であることを理由に頑強に拒否するという出来事があった。
結局、選管の大規模採用不正事件が起こって監査と捜査を受けることになり、国情院の点検を受け入れた。が、応じたのはシステム機器全体のほんの一部のみの点検だった。しかもその一部点検の結果は深刻で、国情院職員がハッキングを試みると容易にデータ操作が可能であり、事実上ファイアウォールもなく、パスワードも単純な「12345」といったものだった。
国情院の報告を受けて尹はショックを受けたが、憲法機関である選管は、司法部の関係者が委員を務めているため、令状による家宅捜索や強制捜査は事実上不可能であり、選管自らが協力しなければ真相究明が不可能だった。24年4月の総選挙前にも問題のある部分の改善を求めたが、改善されたかどうか不明であった。それで今回の非常戒厳の布告により、国防長官に選管の電算システムを点検するよう指示したというのである。
何やらこの辺りは、20年の米大統領選における選挙不正疑惑とそれを4年間唱え続けたトランプを彷彿させる。『中央日報』は13日のコラム【時視各角】で「政権を滅ぼした尹大統領の3重中毒」と題し、尹が非常戒厳発布に至った3つの理由を、その精神状態から忖度している。
1つは権力中毒。尹には検事時代と同様に自分がその気になれば制圧できない対象はないという確信があったというのだ。後に和解したが尹は朴槿恵を監獄に送り込んだ。