第77条 ① 大統領は戦時·事変又はこれに準ずる国家非常事態において兵力により軍事上の必要に応じ、又は公共の安寧秩序を維持する必要があるときには法律の定めるところにより戒厳を宣布することができる。
② 戒厳は非常戒厳と警備戒厳とする。
③ 非常戒厳が宣布されたときには法律の定めるところにより令状制度、言論·出版·集会·結社の自由、政府や裁判所の権限に関し特別な措置をすることができる。
④ 戒厳を宣布したときには大統領は遅滞なく国会に通告しなければならない。
⑤ 国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求したときには大統領はこれを解除しなければならない。
一見して、尹が12日に出した談話で述べた事態を、なぜ第76条の緊急命令ではなく、第77条の戒厳に拠ってしか対応できないと考えたかが、先ず問題になりそうだ。即ち、その事態が「戦時·事変又はこれに準ずる国家非常事態」に当たるのか否か。むしろ第76条の①にいう「内憂・外患」又は「重大な財政・経済上の危機」に際し、「国会の集会を待つ余裕がないときに限り」「法律の効力を有する命令を発することができる」との条文に従うべきではないかということだ。
また「軍事上の必要に応じ」としている割に第77条の戒厳の要件とその種類は余りに概略的に過ぎる。その理由は憲法とは別に「戒厳法」が定められているからで、韓国漢陽大学の方勝柱教授は「大韓民国憲法上の国家緊急権制度」なる論文で「戒厳の本質」としてこう述べている。
一国が国家非常事態に瀕した際、それに対応するためには様々な方法がある。しかし、戦時や事変、その他それに準ずる国家非常事態に瀕して兵力をもって軍事上の必要に応じ、又は公共の安寧秩序を維持する必要がある時に行う非常措置が戒厳だと言える。
大韓民国憲法第77条は、「兵力として軍事上の必要に応じ、又は公共の安寧秩序を維持する必要がある時」という必要性の原則を明確にしている。従って、このような必要がないにもかかわらず、兵力を、政治的目的を追求するための手段として使おうとするか、又は兵力の力ではとても克服できない事案に対し、むやみに兵力で対処しようとするのは最初から戒厳の本質に反する違憲だろう。