この中で、被害者として名乗りを上げた人がソーシャルメディア上で非難され、自殺した例が紹介されている。アザー氏は遺族を訪れ、話を聞いている。
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――声を上げた人が自殺したという衝撃的な展開となりました。報道を聞いたとき、いかがでしたか。
インマン氏:ここまで来てしまった・・・と。本当に、(目の前が)真っ暗になりました。
――BBCからは何か言われたのでしょうか。日本だと、どんなに良い番組でも、その結果、亡くなった人が出た場合、作った人が責められる。今回は、それはなかったのでしょうか。
インマン氏:それはなかったですね。(制作者を責めるのは)まったく間違った解釈だと思います。こういった事件を黙っているのは良くないから、こういうことが発生しないようにするのが、良い社会を作る私たちの義務でもあります。作る側を責めるのは、完全に間違った考え方ですね。
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2023年3月にBBCがジャニーズの性加害問題を報道後、ジャニーズ事務所は解体し、被害者への補償事業に特化する新会社「スマイルアップ」が設置された。代表には事務所のスターの一人だった東山紀之氏が就任した。
続編の番組にはアザー氏による東山社長への数分の単独インタビューが入っていた。性加害の被害者を誹謗中傷する人たちに対し、「直接呼びかけてほしい」とアザー氏が言うと、東山氏は「言論の自由もあると思う」と答えた。
また、ほかの被害者による証言でジャニー喜多川氏以外にも事務所の職員で性的加害を行った人物が2人いると明らかにし、アザー氏が「警察に届けるべきではないか」というと、「それは被害者側のやること」と回答している。英国の同様の事件では、被害者に対する真摯な謝罪を表明することが期待される中、英国で番組を見ていた筆者は大きな衝撃を受けた(約35分にわたる動画はこちらから)。
4月に入って、スマイルアップはBBCが「発言を意図的にゆがめて放送した」などとして、訂正と謝罪を要請する文書を送付した。5月、BBCは「スマイル社の主張を否定する」とする声明を発表した。番組は「BBCの厳格な編集ガイドラインに沿って綿密に調査され、報道された」、「BBCは編集上の決定に際して常に慎重な検討を重ねており、東山氏を含むすべての取材対象者が公平かつ正確に描写され、必要なすべての反論機会が与えられるよう配慮した」と反論した。