インマン氏:最初は、目的が被害者の声がちゃんと、やっと届くことができればいいということでした。
私が一番恐れていたのは、それがまた無視されてしまうのではないかという点でした。被害者の方が顔を出して、すごく度胸のいることをやって、バッシングを受けるかもしれないということを分かっていながらも、社会が変えられるのなら、顔を出すと言って、私たちの番組に参加してくれたんです。その人たちの声が無駄になってしまうのが、それが本当に一番怖かった。
そうはならなかったというのが本当にほっとしたというのと、ジャニーズ事務所には責任を取ってほしかったのです。というのも(それが)被害者にとっての正義につながると信じていました。
日本の社会にとっても、ジョニー喜多川の行動やそれを隠した、許したジャニーズ事務所をそのままにしておくと、日本社会はこれはいいいことなんだ、やってもいいという風に認識してしまったら、もう日本社会は終わり・・・じゃないですけど、芸能界だけじゃなくて、いろんな業界でこういうことが起きていると思うので、ジャニーズ(事務所での性加害)を許してしまったら、ほかのことも許してしまうという合図になってしまったら、最悪だな、と思っていました。
そうはならなかったので、もう本当にうれしかったです。
――海外のテレビ局が作った番組が日本でこれほどの大きな影響を与えたのは、これまでになかったことだと思いますよ。
インマン氏:あまりにも日本のメディアが(ジャニーズ問題に)触れてこなかったという要素もあるのかもしれません。
――BBCの番組を見て、声を上げる人が出てきて、地盤が動いたように思います。下からの動きですね。最初におっしゃったように、ドキュメンタリーはいろいろな人にメッセージが届くようです。
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最初のドキュメンタリーから1年後、BBCはその後何が起きたかを探る番組を放送した。「アワ・ワールド:捕食者の影(OurWorld: TheShadowofaPredator)」(2024年2月24日放送)