――「日本についての専門家」ですね。

インマン氏:でも、テレビのドキュメンタリーの制作では誰もがやっていることです。一時的にその番組が扱うトピックについては専門家になる。でも、次の番組では次のトピックに移ってしまうから、全部忘れてしまうのです。

旧ジャニーズ事務所・創業者喜多川氏の性加害問題を取り上げることになったきっかけは、BBCのほうから「これは追及するべきものではないか」と声がかかったときだったという。

日本にいた中学生時代、インマン氏はジャニーズのタレントの音楽を楽しんでいた。「深掘りしてみたい」という気持ちを持ってはいたが、巨大な存在となったジャニーズ事務所を一人で取り上げるのは難しいだろうと感じていた。

長い歴史を持ち、優秀な制作チームをもつBBCから声をかけられたとき、「ぜひやりたい」とインマン氏は思ったという。「BBCでなかったら、(制作は)とても難しかったと思う」。

――「J-POPの捕食者秘められたスキャンダル」は2023年3月に放送されました。制作には1年ぐらいかかったのでしょうか。

インマン氏:そうです。企画はもうずっと前からで、2020年ぐらいだったのだけれど、コロナが発生して(制作チームが)日本に行けなくなって、いったん中断されました。行けそうになった時に、私がもっと徹底的にリサーチして、22年の8-9月に日本にいて、撮影して、編集に入りました。

――番組の中では、実際に取材を始めた時、事務所について話したがらない人が多かったという説明がありました。制作を中止しようと思ったことはあったのでしょうか?

インマン氏:一切なかったです。どちらかというと、エンジンがかかりました。

――ナレーター役となったジャーナリストのアザーン・モビーンさんと一緒に働いたのはこの時が初めてでしょうか?

インマン氏:この時が初めてでです。彼は日本に行くのは初めてじゃなかったかな?