たとえば、半額の税金を投入されている一人暮らし高齢者への自治体による夕食宅配サービスは「公助」の一つであり、民間企業がビジネスとしている「夕食宅配」は代表的な「商助」としての専門サービスの消費になる。また70歳以上のシニア割引のうち自治体独自の「敬老優待乗車証カード」などもまた「公助」の一環である。

「商助」を組み込んだネットワークとコミュニティ

よく知られた「商助」の事例としては、愛西市の「孤立死予防・早期発見」事業の中で、「公助」や「共助」を越えて、新聞販売店、乳酸菌飲料販売店、牛乳販売店などがしっかりと関わってきたという研究成果である(松宮、2022:119-123)。

もう一つの長久手市の「高齢者孤立対策」でも、「公助」や「共助」を越えた喫茶店利用の研究がある(松宮、2025:164-169)。これも高齢者の見守りネットワークなのであるが、「サードプレイス」としての喫茶店が活用されたコミュニティ構築になっている。この「商助」を組み込んだ支援システムは新しい福祉社会システムづくりにも応用可能である。

「商助」としての「高齢者終身サポート事業」

さらに、身寄りのない「一人暮らし高齢者」の激増により、高齢者が入居・入所する際のサポート事業を民間が始めた。それは緊急連絡先や「保証人」の引き受け、そして契約者が亡くなった時の遺体の引き取りや諸費用の支払いを含む民間の事業であり、「商助」といってよい。高齢期の課題が包括的なので、このような「商助」もまた、「孤老社会」では不可避となるであろう。

今のところは『高齢者等終身サポート事業者ガイドライン』(内閣官房、内閣府孤独・孤立対策推進室など)が公表されていて、参考になるところが多い注10)。

「互助」と「共助」

また、高校生ボランティア活動者が高齢者の日常的な買い物行動を支援する際に、高齢者がその高校生に日常生活面の知恵を与え、昔のしきたりを教えれば、それは消費というよりも「互助」としての交換に変貌する。