第三には、宮本が紹介した島根県匹見町の「買い物難民の支援」事例がある。「生協が公民館まで商品を配送・・・・・し、・・・・・・(中略)、商品を届ける・・・・・・際、見守りも行うという取り組み」(傍点金子、同上:9)でも、生協の「商品」は無料ではないのだから、これは「商助」として位置づけられる。

さらに結論が、「行政・企業・・・サードセクターがつながりながら連携し、解決策を模索する相互補完が重要となる」(傍点金子、同上:9)ならば、四助だけではなく「商助」まで取り込んだ方が「『互助』型強化社会の構築」にも有効であると思われる。

このように、宮本がいう「縮小社会」でも私が造語した「粉末社会」でも、可能なかぎり「自助」「互助」「公助」「共助」「商助」の五助への目配りから、新しい社会保障、福祉社会、社会資本主義への手がかりが得られるのではなかろうか。

注7)「福祉追求」とは今日的な表現では「ウェルビーイング」に近いと考えられる。

注8)生活様式の大変化は、当初は産業化=都市化の軸が基本であったが、その後は高齢化、少子化、情報化なども徐々に包み込むようになった。詳しくは金子・長谷川(1993)を参照してほしい。

注9)すでに総合誌『中央公論』では「孤老時代」が特集されている。

注10)詳しくは沢村(2024)を参照してほしい。そこでは民間事業者だけではなく、自治体や社会福祉協議会などもまた、類似の取り組みを開始したことが紹介されている。もっともこの場合の取り組みは「公助」になることは云うまでもない。

注11)公助や共助や商助などの支援様式は、社会資源やサービスを提供する側からの視点とそれにより多様なニーズを充足する利用者側の視点がある。ここでは社会システム論の立場からの支援様式なので、民間の有償サービスの提供を「商助」と位置付けている。

【参照文献】

 

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