先進国、途上国いずれの側にも温暖化交渉プロセスで禄をはんでいる交渉官たちがいる。交渉決裂によって多国間のプロセスが機能していないことを露呈し、彼らの存在意義に疑問符がつくことは何としてでも避けたいという共通の利害があったという皮肉な見方もできる。

緩和では先進国に強い不満

資金は途上国に強い不満を残す結果となったが、緩和では先進国に強い不満を残す結果となった。

緩和作業計画ではグローバルストックテイクに盛り込まれていたエネルギー転換(再エネ設備容量3倍増、石炭火力のフェーズダウン、化石燃料からの移行等)のフォローアップ等は一切盛り込まれなかった。

先進国が緩和アジェンダの深掘りを期待していたUAE対話や公正な移行作業計画(JTWG)については議論が決着せず、先送りとなった。閉会プレナリーにおいて先進国代表は口々に緩和アジェンダが進展しなかったことに強い不満を表明した。

市場メカニズムの詳細ルールはようやく決着

資金と緩和という政治的なアジェンダの陰で目立ちはしなかったが、COP29ではパリ協定6条2項、4項に規定する市場メカニズムの詳細ルールが合意された。

6条2項メカニズムは日本が進めているJCMを含む2国間取引であるが、プロジェクトの承認プロセス、必要とされる情報の範囲、国際登録簿との関係等の点において非常に厳格な手続きを求めるEU・島嶼国と柔軟な手続きを主張する米国、カナダ、豪州、日本などとの間で意見対立が続いていた。

今回の詳細ルールの合意により、市場メカニズムが動かせるようになれば緩和を中心に途上国に対する民間資金の移転が促進されることとなろう。

COP29の評価

COP29では、資金面では途上国の要求水準を大幅に下回る「少なくとも3000憶ドル」で、緩和面では先進国の主張する野心的メッセージを含まない形で決着した。先進国、途上国それぞれが強い不満を残す決着であり、ある意味、「バランスのとれたパッケージ」であったともいえる。