実質年収はどんどん下がっているように見えるが…
実質”時給”で見ると2015年あたりから既にかなりの上昇傾向にある。
この本は「データ」「全体感」「事例」のバランスがすごく良い本なんですが、こういう情勢下で、例えば酒田市の中小企業が待遇改善に必死になっている様子が取材されていたりもして、全体として大きな変化は既に日本経済の中で進行中であることが多面的に論証されていました。
3. 発想を変えれば怖くない?この本読んでてなるほどなあ、と思ったのは、過去の日本経済は「需要が足りない」事で延々と苦労してきたわけですが、これからは「供給が足りない」ことをなんとかすることが重要になってくるという話です。
要するに、アベノミクス時代のように政府と中央銀行がものすごく必死になって「需要」を創り出したりしなくても、人手不足が深刻すぎて自然と「仕事はいきわたる」というか、何なら勝手に給料は上がっていく循環に当然のように入っていくことになる。(むしろ供給力不足で経済が縮小しかねないので、供給サイドの改善こそが中心課題になっていく)
少し長めに本の中から引用しますが、
これからの経済の需給環境を決定する主役は財政・金融政策ではなく、人口動態の変化に伴う構造的な人手不足に移りつあるということなのである。
今後の日本経済においては、政府・中央銀行による積極的な介入なくしても、人口動態の変化に伴って自然と市場の需給は逼迫した状態が常態化していくだろう。そうなれば、これからの日本の経済を占う上で重要になるのは、経済全体の供給能力をいかにして高めていくかという、経済学が本来想定している問題に回帰していくことになる。そして、これからの人手不足が常態化する局面においては、市場メカニズムが健全に発露する中でそれが企業の変革を促す圧力となり、日本経済のさらなる行動化を促す原動力となるのである。
で、本の中で言われてるのはこれから重要なのは「省人化投資」で、これはあふれるほど不法移民が入ってくるアメリカとかではなかなか発展させづらく、産業用ロボット技術の基盤があり、現場人材と技術者の間の距離が近いカルチャーもある日本のこれからの有望分野となるだろうという事が指摘されています。