仲村:タンピネスに来て2年目だったか、3年目だったかのときに5年契約を提示されて、その時にスタッフから「いっそ帰化しちゃえば?」と言われたんです。向こうからしたら茶化した一言だったのかもしれないですけど、僕にはビビっとくるものがあって、そういえば俺って夢があったよなと思い出しました。
小6のころ、実家の大黒柱に「サッカー選手になる」という夢を紙に書いて今も貼ってあるんですけど、その夢を達成してプロになった年にもう一つの夢として、「2022年カタールW杯出場」と書いて貼ったんです。代表選手になる、W杯に出るという夢をすっかり忘れていたんですが、そのスタッフの言葉で思い出して、シンガポールからW杯に出るというのは現実的には難しいけれど、可能性はゼロじゃない。それならチャレンジしようと決意しました。
心配だったのは家族のことです。でも、妻も娘もシンガポールをすごく好きでいてくれて、「シンガポール国籍を取ってもいい?」と相談したところ、「いいよ、面白いね」という感じだったので、特に帰化に不安はありませんでした。
シンガポール代表として
ー最近ですと、インドネシア代表が自国にルーツを持つヘリテイジ型の帰化選手を大量補強して話題になりましたが、シンガポール協会の帰化戦略に対するスタンスは?
仲村:10年ぐらい前は、スタメンの半分が帰化選手という時代もあったそうですが、彼らが引退してパスポートを返却し、自国に帰るパターンが多かったので、あまり協会としても促進してこなかったようです。ただ、他国が帰化戦略で結果を残し始めて、シンガポールも追随しようという流れになりつつあります。シンガポールで5年プレーする選手はなかなかいませんが、長期契約を結んで、そういう選手を増やそうという記事を昨年あたりに協会が出していました。その第1号が僕だったので、クラブも帰化手続きに協力してくれました。