しかし、近隣の「遊び仲間」では「気が合う」ことにより集団が形成されているために、「気が合わなければ」すぐにでもそこでの関係性が放棄されてしまう。
会社職場では競争原理そのような体験をした後に、学業を終えてめでたく希望した職業に就けても、そこでは原則的に競争原理が働くから、同僚としての付き合いや協力は業務の一環に組み込まれてしまい、友人関係までの発展にはなりえないことが多い。
かつての高度成長期であれば、基本的には正規雇用の従業員だけだったから、業務中の競争原理を緩和する社内装置として、アフター5の時間帯で、会社側の配慮でスポーツ系のサークル活動やお茶や生け花などの趣味系のサークル、さらに英会話などの文科系のサークル活動も盛んに行われていた。そこでは、友人や親密な他者そして配偶者にも出会うことができた。
アフター5では会社内部の部課係の壁を超えたつながりが生まれ、業務としては競争原理を活かしながら、インフォーマルには親密な関係が全社的に世代内でも世代間でも形成されやすかった。
非正規雇用率の高さが会社内サークル活動を解散させたしかし、20年前からの人材派遣解禁が全分野に及んだ結果、若者の非正規雇用率は40%近くにまで上昇して、もはや正規雇用者を主軸とした企業内部のサークル活動自体が消えかかる状況が生まれてきた注6)。
学校卒業後は競争原理と達成原理そうすると、高校大学までの若者にはクラスと部活というフレンドリーな集団関係や親密な他者を見つけ出す可能性があったが、いったん卒業すれば、就活段階から他者との競争原理が働く社会システムのなかで、自らの業績達成を目指すことが日常性になる。これでは仕事自体がストレス源になり、加えてフレンドリーな関係性が作れなくなる。
その結果としての単身化であり、これは必然的に未婚化を伴った。単身化は本人が意図的に他者とのかかわりを求めなければ、友人・知人や近隣などとの交流を乏しくしてしまい、孤立してしまう結果、否応なく孤独なライフスタイルが日常化してしまう。
欲求の段階論