人間のニーズモデルでそれを考えておこう。図3の右側は周知のマズローの「欲求5段階説」である。すなわち従来からの「プレ・デジタル世代」では、「欲求」の段階は動物にも認められる「生物学的・生理学的欲求」と「安全とセキュリティ」と「愛と所属」があり、その上には人間だけしかない「自尊心」と「自己実現」が置かれることになる。その意味で、マズロー・モデルでは「愛と所属」の対極に「孤立・孤独」が想定される。
多くの場合、これら5段階は下からの充足の積み上げが基本になる。たとえば「安全とセキュリティ」がないままに、「自尊心」が満たされることはない。また、「自己実現」のためには、下位の欲求すべてが満たされていることが前提とされる。いわば「欲求」の序列化がはっきりしている。
ミレニアル世代モデルところが、ベンジャミン・マンによる「ミレニアル世代」モデルではかなり様相が異なる。
キングとペティがこれを引用して解説を加えた図3左側の5段階モデルでは、土台の「安定性(stability)」がマズロー・モデルの「生物学的・生理学的欲求」と「安全とセキュリティ」に対応する。この欲求は具体的には食料、暖かさ、住まいなどのニーズを包括するが、いずれも人間だけではなく動物でも認められる。
次には「アクセスと公平性(access & equality)」があり、コミュニケーションツールの所有に関する不公平性やアクセスの欠如に向けられる。ここから上は人間に特有の欲求になるが、コミュニケーションの動物としての人間にとって、そのツールへのアクセスは公平であることを旨とする。
第三には、「健康とエンパワーメント(health & empowerment)」であり、メンタルヘルスと成長のためのリソース活用能力となる。健康は心身両面を快適に維持するためには不可欠であり、エンパワーメントもまた動機づけの面では人間の活動を支え、思考を活性化させる要因になる。
「粉末社会」では「愛と所属」ニーズは満たされない