「愛と所属」はマズロー・モデルでは三番目だったが、ミレニアル世代の「愛と称賛(love & admiration)」は第四番目になっていて、ネット上にも拡散した広い社会的承認がその根底に置かれた。そしてこれが「成長」への強い動機づけを果たす。
しかし、単身化が進む「粉末社会」では、このニーズは満たされない。それは「愛と所属」でも「愛と称賛」でも同じだが、その理由は両者ともに個人がもつ関係性の中でしか獲得できないからである。
そして、最上位にはレガシー(legacy)が置かれた。これは個人ではなく「集団的なレガシー」とされ、「個人を超えた最終超越状態」であり、究極には「人類がうまく協働」する状態を意味している(キングとペティ(2021=2022:380-381)。
社会システム論的にはこの集合的「遺産」は、「経済」「政治」「社会的共同体」「価値」が連動してはじめて社会システムの「適応能力上昇」を支えることにつながる。また「適応能力上昇」「機能分化」「統合」「価値の普遍化」として表出すると応用できる(金子、2023)。
以上の「粉末社会」論を受けて、「下」では現代日本の家族変容についてみておこう。
(単身化が進む粉末社会の支援方式(下)に続く) ※【参照文献】は「下」でまとめて掲載します。
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注1)本稿と同じ「人口動態統計」データを使った日本総研の藤波の試算では、2024年の出生数は68.5万人と推計されている。なおこの場合の合計特殊出生率は1.15が見込まれている。いずれにしても総人口も子ども数も本年と比べてもかなりな減少が予想される。
注2)『ビジョン2100』についての詳細な特集は『中央公論』(第1683号 2024年2月号)に詳しいので、ここでは触れないことにする。
注3)「出生数/死亡数」だけでみると、「横浜市を筆頭に、川崎市、京都市、神戸市など、中枢性が低下していても、まだ能力供給性が高い『巨大な衛星都市』的な政令市は健在である」(北村、前掲論文:80)は該当しなくなる。なぜなら、横浜市は表3に分類され、京都市と神戸市は表4に該当するからである。また、「東京や大阪、名古屋といったメトロポリス的な大都市を支える役割や、地域経済の拠点としての役割を担うことは十分可能である」(同上:80)もまたそのまま受け取りにくい。というのも、「人口反転能力」の点からすると、大阪も名古屋も表3に含まれるからである。