「粉末社会」は2024年11月12日に国立社会保障・人口問題研究所が公表した『日本の世帯数の将来推計』(以下、『推計』と略称)によって、さらに具体的に論じられるようになった。
その副題は「2040年には半数以上の都道府県で平均世帯人員が2人を割り込む」であり、文字通り社会システム全体の小家族化と単身化が顕著になり、日本社会システムが「粉末社会」の様相を濃厚に示すようになると推計されたからである。
浮遊的存在としての単身者単身化が未婚化を伴いながら進むので子どもが生まれず、結果的に家族が限りなく縮小して、個人がそのまま社会システムのなかに単独で析出される。
それは個人の自立というよりも、自らを育ててくれた定位家族からの離脱、および自己選択による配偶者との生殖家族を作らない単身化のために、結果的に若い世代は二種類の「家族」からの支えを失ってしまう浮遊的存在としての個人となる。
寄り添う中間集団がある生徒や学生の時代日本の子どもは生まれた定位家族に属している20歳くらいまでの期間は、義務教育や高等教育を受ける。幸いにも学校時代ではクラスがあるから、生徒としても学生になってもそこでの交流が軸となるし、それ以外にも希望者には文化系やスポーツ系のクラブ活動が可能であり、そこでの諸活動を通じた仲間も得られやすい。
そのため一般的に言えば、職業に従事する前の生徒や学生では孤立や孤独のライフスタイルはまだ生まれにくい。そのうえクラブ活動は同級生だけの集まりではないために、そこでの年齢差を前提にした関係性も得られる。
これは、自宅を中心とした近隣から得られる「遊び仲間」の年齢差を伴う世代間関係と同質であり、ちょうど就学前の幼い時に誰もが経験する関係性でもある。
ただし同じ世代間関係でも、学校時代のクラブ活動では野球部やバレーボール部などという同じスポーツを介しての交流・交換なので、そこでの関係性は「気があわなくても」部活を止めるまでは維持せざるを得ない。