ただし北村の所論では、「大都市は全国経済の牽引役になることが期待されて、他の地域にはない自律性が認められる」(同上:80)として、基本的な判断素材が経済変数(都市の中枢性、拠点性、地域経済の拠点性、生活の質の方向性)などに集中している。

これらも重要な判断の指標になるが、表1から表4までの分類もまた、その議論の素材になるであろう注3)。

「粉末社会」として総合化する

さらに『全世代社会保障』では、「世代間対立に陥ることなく、全ての世代にわたって広く共有していかなければならない」(同上:5)とはいうものの、その共有方法が示されなかった。そのため「共有方法」を具体的な「支援方法」と読み替えたい。

そうすると、かつて未曽有の総人口減少、出生数の減少、若者減少、高齢者増大、単身者増加の社会を「粉末社会」と命名した経験を活かして、少子化、単身化、小家族化などが同時進行する時代に正対するためにも、「世代」という発想を重視して、これまでに社会科学のなかで開発されてきた5つの支援方法を精緻化する戦略が有効であると考えるに至った注4)。

第2節  「粉末社会」とは何か

ここでいう「粉末社会」とは、「社会全体の連帯性や凝集性が弱まり、国民全体が個別的な存在に特化した」(金子、2016:85)社会を表わす概念である。また個人レベルでは、粉末化現象を「私的権利の強調、利己主義、欲望満足、欲求充足志向」(金子、2023:32)で表現したこともある注5)。

いずれにしても社会システムにおける個人の粉末化への配慮がなければ、政府による単発的な一時金の支給はもとより、毎月支給の子育て支援金の増額を実施しても、少子化の根本的対処にはならないとした(同上:283)。

なぜなら、日本の婚外子比率はこの数十年でも2%程度で推移していて、そのため単身化がほぼ自動的に未婚化へと連なり、最終的には社会システムのなかでは粉末化へと変貌するので、出生数や比率が高まらないからである(金子、2024b:31)。

世帯総数の増加と平均世帯人員の減少