気づいている人もいるように、コロナに始まりウクライナが続いた2020年代の前半は、薄められたショボい戒厳令とも呼ぶべき空気が、日本の特にSNSを覆った時代だった。冒頭で紹介した『公共』のインタビューで、ぼくはそのことをこんな風に述べている。

ChatGPTのような生成AIに質問して教えてもらうのは、Googleで検索して自分で考えるより10倍も多く電力を使うので、環境への負荷としては最悪です。だからAIと脱炭素化が同時に流行するのは、本来なら矛盾している。

どうしてそんな奇妙な事態が起きたかといえば、「人間の悪口さえ言えればそれでいい」人が、あまりに増えたからです。「どうせAIには勝てない」「地球にとっては迷惑」という口実をつければ、いくらでも他人の活動をくだらないとけなすことができます。

ニヒリズムと癒着した正解志向は、「だからそれ以外は要らない」という攻撃の道具として便利だった。それが猛威を振るったコロナ禍では、他の人を叩いてストレスを晴らすために、お前のやっていることは「不要不急だ!」とレッテルを貼る人が続出しました。そうしたネットリンチの流行は、ウクライナ戦争の下でも、意見が異なる相手を「親露派」呼ばわりする形で引き継がれています。

こうした状況では、同じ社会に生きる人を信頼しあえず、まして議論に基づく民主主義など育てようがないでしょう。

強調する箇所を改変

2020年に始まったコロナ禍では、急造されたワクチンは「安全なのか」「強要するのはどうなのか」と疑問を呈しただけで、①自然科学を全否定する者であるかのようにバッシングされる例が目立った。しかし、現実はどうだったのか。