中国も、習近平氏への力のシフトは、胡錦涛的な在り方、共青団のエリートが掲げる理想(偽善)に対するアンチテーゼとも言え、結局は「権力なんだ」、「力なんだ」、「共産党が中国社会を牛耳らなければならないんだ」との露悪の発露に見える。

偽善の最後の砦とも言うべき欧州でも、露悪家が多く台頭してきており、世界の多くは偽善的世界から既に露悪にシフトしている。

翻って、わが国はどうであろうか。特に注目されるのは、衆院選における国民民主党の躍進だ。

冷静に観察すれば、今回の衆院選では、これまで自民党に入れていた層が、引き続き我慢して、或いは積極的に自民党に入れ続けた人と除き、①棄権(投票に行かず。実際投票率も低調)、②白票を投じる(実際、無効票は大幅増)、③他党に入れる、といういずれかの行動に出た結果、立憲民主党が約50議席増、国民民主党が約20議席増ということになった。

ことさらに国民民主党の躍進を取り上げるような話でもないのかもしれない。少し前の維新などと同様、一時的な変化にも見える。

しかし、国民民主党は、与党の過半数割れの効果が大きいとはいえ、ネットやSNSを活用し(注:短絡的な思いつきでの活用ではない。筋金入りで時間をかけてのネット・SNS活用だ。私は玉木氏と内閣官房で近いところで働いていた過去もあり、留学先の先輩でもあり、20年近い付き合いだが、10年以上前から、地道にネットの可能性・活用ということを言い続け、実行し続けている)、見かけ以上の影響力を行使している。

党首の玉木氏は、東大卒で財務官僚OBのエリートなので、本来は「偽善家」のはずである。ただ、その主張は、「将来世代のために、財政規律をきちんと守ろうではないか」という次世代などを意識したサステナビリティなどを重視した「偽善的」なものではなく、「今、みな困ってるんだよ。だから金を配ろうや」という乱暴に言うとバラマキ的なものである。「財源は」というと、「それは何とかなる。今は、税収増えてるんだから」というものだ。