このコア・メッセージはかなり強力なものであり、よほどの大変化がない限り揺らぎそうにない。

2会合で1パッケージという考え方は、これまで本ブログが取り上げてきた「引締め策の決定は展望レポートが出る会合(4月、7月、10月、1月)に集中し、その直前の3で割れる月の会合は引締め期待を裏切ることが多い」現象をも包摂する。

例外は2024年3月のマイナス金利の撤廃であり、代わりに4月はハトサプライズになった。この時は一つのパッケージの中で順番が逆になったわけである。しかし利上げがあろうとなかろうと、これら一回一回の会合で日銀のスタンスがブレたわけではない。

植田日銀のコミュニケーション

それが毎回ブレたように見えるのは植田総裁のコミュニケーションのせいである。これは何も植田総裁は利上げ等の実弾を出さずに魔術師のような舌先三寸で円安を止めるべきだとか、株式市場の急落を招きそうなタイミングを事前に察知し、株式市場に配慮しながら金融政策を決定すべきだと言っているのではない。

植田日銀のコミュニケーションに対する本ブログの問題意識は「何も毎回真面目に回答する必要もないのだが、コミュニケーション重視の植田総裁が政策変更の時は政策変更の理由を、据置きの時は据置きの理由を真摯に語ってしまうため、市場参加者の近い将来の金融政策に対する見通しが会合ごとに振り子のように大幅にブレる結果を招いてきた」に尽きる。

長い利上げサイクルで全ての会合で利上げを行うわけではなく、利上げの回も据置きの回もあるのは当たり前なのだから、何も利上げの会合で利上げの理由を説明し、据置きの回で据置きの理由を説明する必要はないのである。

もちろん円安でピリピリしている中、特に据置きの回では記者勢がなぜ利上げしないのかを問い詰め続けたというのも背景にある。しかし記者会見は大学の講壇でも博士論文のディフェンスでもないので、彼らが納得するまで説明を行う必要は必ずしもない。まともに回答しないという選択肢もあるのである。