興味深いことに、この傾向は子供が描いた作文から専門書まで一貫した傾向となっています。
しかし研究が進むにつれて、ジップの法則は言語学の分野を超えた、神秘的な普遍性があることがわかってきました。
たとえば多くの国の都市規模を分析するとおおむねジップの法則に従っており、少数の大都市が優勢で、大多数の都市は小規模であることが判明しました。
またデータサイエンスの分野では、コンピューターのファイルサイズにもジップの法則が当てはまることが示されています。
さらに神経科学では脳内のニューロンの発火頻度もジップの法則に従い、少数のニューロンが非常に活発であるのに対し、大多数のニューロンの動きは鈍いことが知られています。
身近な例では、赤ちゃんにつけられる名前の人気もジップの法則におおむね従うと報告されています。
では物理法則を表現する数式はどうでしょうか?
先にも述べたように、一般的には、個々の物理法則はターゲットとなる現象についてのみ記述しており、対象外となる物理現象については当てはめるのは難しくなっています。
しかし、もし異なる物理法則たちが、自然法則という1つの巨大なゾウを異なる側面から描いたに過ぎないならば、電磁気学の数式も熱力学の数式も「ゾウ」に関する共通した痕跡を残している可能性があります。
そこで研究者たちはまず、古今の数式を集めることから始めました。
以下は収集された3つの数式集になります。
1つ目は「ファインマンの物理学」という有名な物理学の解説本に記されている100個の数式。
2つ目はWikipediaに乗せられている科学者の名前が付けられた41の数式。
3つ目はインフレーション宇宙論に関連する71の数式です。
これら3つの数式集は、一部重なる部分もあるものの、ジャンル的にはかなり離れたものとなります。
たとえば「ファインマンの物理学」は大学などでは物理学の教科書として使われることが多く、内容も古典物理に多くの紙面を割いている一方で、インフレーション宇宙論に関する数式は先進的な内容が多く、教科書に乗せられるような気軽なものはあまり多くありません。