学校のテストでも電磁気学の問題を解くのに熱力学の公式を当てはめようとする人は「愚か者」と言われてしまいます。

結果として、人類は場面にあわせて無数の物理法則と数式を発明することになりました。

物理学の歴史は、新たな法則や新たな数式の発見の歴史とも言えるでしょう。

そして新たな法則や数式が増えるたびに、新たな記号の追加も進んでいきました。

しかし増え続ける法則や数式、記号について疑問を抱いている人々も存在していました。

物理法則は無数に存在しますが、自然は1つです。

つまり無数の物理法則は、自然という1匹の巨大なゾウをさまざまな角度から描いたに過ぎない可能性があったのです。

そこで今回、オックスフォード大学の研究者たちは「メタ的な」視点を採用し、異なる法則について記述されている数式を分析し、背後に潜んでいる「ゾウ」あるいは「裏ルール」が存在するかを確かめることにしました。

あらゆる物理法則が従う「裏ルール」が存在する

無数の物理法則があっても宇宙は1種類しかない
無数の物理法則があっても宇宙は1種類しかない / Credit:clip studio . 川勝康弘

無数の物理法則は、自然という「1匹の巨大なゾウ」を別角度で見た結果に過ぎないのか?

人類が気付いていないだけで全ては一定の裏ルールに従って存在しているのではないか?

そうだとするならば、それはどんなものなのか?

謎を解明する手段として研究者たちは「ジップの法則」を用いることにしました。

ジップの法則はもともとは言語学者によって観察されたものであり、ある言語で最も使われる単語は、2番目に使われる単語の2倍、3番目に使われる単語の3倍の頻度で登場するという法則です。

たとえば英文では「the」が最も多く登場する単語であり、全体のおよそ「7%」を占め、2番目によく使われる「of」の頻度は半分の「3.5%」であることが知られています。

(※日本語ももジップの法則に従うことが判っており、テキストにおいては所有を意味する「の」が最もよく使われ(5~10%)、2番目は目的や方向を現わす「に」が多く(4~7%)が使われています)