ゴジラ映画の特徴

1. 1954年3月1日、マグロはえ縄漁のさなかにアメリカが水爆実験をビキニ環礁で実施した。被災した「第五福竜丸」はアメリカが設定した危険水域の外にいたが、爆発の威力が想定以上だったために、爆発で飛散したサンゴ礁の破片など大量の死の灰(放射性降下物)を浴びてしまった。そのため、帰国後に乗組員の多くが急性放射線症と診断され、そのうちの一人である無線長が半年後に死亡した。その他の乗組員も様々な症状を訴えるようになり、この事件は日本では反核運動が高まる契機となった。

2. 現代では全滅したと思われていた古代恐竜が、その当時行われたビキニ環礁での水爆実験の放射能を大量に浴びてゴジラに変身したというストーリーにより、映画「ゴジラ」は単なる娯楽作品ではなく、「水爆大怪獣映画」とされ、日本社会に大きな反響をもたらした。

ゴジラは「核の恐怖の象徴」

3. 映画「ゴジラ」では、ゴジラは「人間が生み出した核の恐怖の象徴」として位置づけられ、日本に上陸したゴジラは、繰り返し東京を始めとした日本の大都市を破壊する。そのシーンは人間が生み出した怪獣=核が人間の社会と文化の破壊を象徴するが、最終的には自衛隊の最新鋭の火器により葬られるか、海底深く隠れてしまうという終わり方が多かった。

4. 中期のゴジラ映画になると、キングギドラに象徴される宇宙大怪獣の地球来襲をゴジラが単独で迎え打ち、ゴジラが勝つか、もしくは引き分けてしまうという筋書きに変更された。

5. 初期の国産ゴジラ映画を何回か繰り返し見ていた私も、子ども心に「核は危ない≒怖い≒いけない≒禁止」というメッセージが刷り込まれてしまったように思われる。

6. 体長50mのゴジラが街を破壊するシーンでは数多くの火災、ビルや自動車などの瓦礫の山、鉄道・送電線・港湾・道路などの社会的インフラの崩壊と炎上が常にあり、これらが太平洋戦後10年間の食糧難や就職難などの日常性がもつ「出口塞がり」を一時的にせよ忘れさせた。