小企業世界では両者の相互関係は長期的に維持され、そこから対立や支配・従属関係は生まれないのである。
資本主義の土台は中小企業日本では中小企業庁、つまり中小企業の支援をする官庁が、世界に先駆けて設立された※6)。
※6)中小企業庁の設立は1948年(旧商工省の外局として)、旧中小企業基本法の制定は1963年である。アメリカの中小企業庁(SBA)の設立は1963年であり、イギリスのそれはずっと遅れて1970年代である。
中小企業政策については、今回の総選挙でもそうだったが、右派と左派、自民党と野党の見解が一致する。それは中小企業こそが国の土台という認識が国民的なものであることを示している。
中小企業、特に小企業の世界では、企業と金融機関の相互理解に基づく良好な関係が形成されていた、ということである注3)。そして、本シリーズの主張のひとつは、長く続いた低金利がこの構造を弱めているのではということだ。
もっとも、それを振り払おうとする方向もある。『中小企業白書』(2024年版)は、金融機関の融資以外の経営支援サービスが拡大していることを、2015年と2023年を比べて示している(図8、図9)。業界も進行している不都合を認識しているのである。
低金利を元に戻せばすべてが復元するわけではない。むしろ、急にそれをやってしまえば、より破壊的な現象が生じる可能性がある。日銀の総裁発言が引き金になった8月暴落はその危険を知らせる信号であったと理解すべきである。
むすび8月の史上最悪の暴落から3ヶ月が過ぎたが、まだ名前がついていない。“名もなき”状態のままになるかもしれない。