翌日には戻したのだから暴落ではないと主張する人もいる。しかし、史上最大の下げ幅だったこと(7兆円という記録的出来高)を思うと、資本主義の象徴的な機構である株式市場の発した内なる声を聞くべきだと思う。
本シリーズの前半では、株式市場の金融化について論じた。資本主義が生み出し世界に蓄積された過剰資本(投資に向かわない)が株式市場を包み込んだ。そのために株式市場は金利に敏感に反応するようになった。
シリーズの後半では、金融世界の構造変化に目を移し、その一現象として中小企業金融の構造変化を扱った。低金利・ゼロ金利が長期に亘ったことも一因となって小企業と金融機関の古き良き関係が崩れかけ、それが金融機関にも反作用し、両者とも危機に陥る。
“金利のある世界”に戻しても、構造は元に戻るどころか、かえって摩擦を引き起こす可能性がある。The NEXT を展望しようとするとき、そうした摩擦は大きな障害になる。中小企業金融世界の混乱、敢えて衰退と言ってもよい現状を放置しては“地方創生”の土台が揺らぐことになるからだ。
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注1)地方銀行、信用金庫の本業は様々な原因から不振である。これを埋める要素のひとつが日銀預け金への預金であるが、それには条件があった。つまり経費削減努力である。
下の表に見るように、OHR(オーバー・ヘッド・レシオ、経費/業務粗利益)に各年度に削減目標が設定されており、これをクリアーしないと日銀から利息はもらえない。経費についても同様の規定があった(表2)。
このために地方銀行は要件を満たすべく経費削減に励んだ。支店の統廃合、そして人員の削減である。ところが皮肉なことに人員削減が一段落する頃に銀行への新しい要望が顧客企業から示されるようになる。図-10は、銀行が融資活動のおまけとして行ってきた従来のサービスではなく顧客が手数料を払っても求めるものの一覧である。