その論文は、米国公文書館で発見された歴史的新事実を暴いた衝撃的な内容だったのだが、その論文の著者は「日本の新聞や学会は、まったくの黙殺でした」「不都合な事実には反論しない。あたかもそれがなんの意味もないように黙殺する。それが戦後の日本のメディアや学会の典型的な対応なのです」と言ったそうだ。これが、早くも1979年には起きていた「半ポスト真実的状況」の一例である。

最近でも、気候変動問題や脱炭素への批判などを、私だけでなくかなりの数の論者が発表しているにも拘わらず、真正面から反論されたことがない。これもまた、「不都合な真実には反論しない、黙殺する」に属する事態なのだと感じる。全く同じだ。

その意味で、この嶋崎氏の著作が捉えている問題意識の射程は、相当に広くかつ奥深いものを包含していると言える。情報を発する当事者であるマスコミ関係者だけでなく、マスコミ報道を受け取る一般市民を含め、できるだけ多くの方々に一読をお勧めしたい。