ウクライナ問題の歴史的背景として最低限おさえておかなければならない出来事は、2014年の「マイダン革命」であり、これにより親欧的・反露的政権が成立した。この事件に米国諜報機関が深く関与していたことは、現在では周知の事実である。

その後に起きたドンバス地方での戦乱、これを解決するために結ばれた「ミンスク合意」と、これに反した戦争行為が、後のロシア軍侵攻の引き金になったとの指摘は、早くから行われていたが、日本のマスコミ等ではほとんど指摘されなかった事実がある。そして専ら、ロシアの侵攻が悪いとの論調一色になった。

また日本では、ドンバスの親ロシア派住民を正式な「難民」として迎えることはなかった。さらには、ウクライナ議会の人権オンブズマンのリュドミラ・デニソワ氏が報道していた「ロシア軍による戦争犯罪」が根拠のない捏造情報であり、調査していたとされる期間に実際には西欧で遊興していたことが明らかになり、ウクライナ議会に解雇されたとの重大事案が発生したが、これも日本では大きく取り上げられなかった。この問題は「ブチャでの大虐殺」などの信憑性を疑わせる極めて重大な不祥事だったはずなのに。本書では、他の諸問題も具体的に取り上げている。

コロナワクチンと情報統制の構図

続く第2章は、コロナ渦、ワクチン、イベルメクチンを巡る報道において現れた半ポスト真実状況の紹介と分析である。全6節ある。

この場合の半ポスト真実的状況とは、「コロナワクチンの有効性と安全性、特に副反応・後遺症の可能性について十分な情報が与えられない状況において、接種推進ばかりを唱えるプラットフォームや主要メディアの情報発信の偏りによって、結果的に健康に関する一部の有益な判断材料が隠されている」状況を指す。

そして、ワクチン接種が「社会防衛」という大義名分で推進されてきた以上、それに異議を唱える者は反社会的だとの思考回路がある、または、最先端科学の結晶であるワクチンを忌避する者は、非科学的で感情的な愚か者だと言った含意もあるかも知れないと指摘する。これらは、コロナワクチンに限らず、先端的な科学・技術に関して、かなり広く適合する指摘であると私は思う。