15時:バレンシア州政府は「対策連携会議」を開いた。各関係組織の代表が出席した。この会議の議長にはサロメー・プラダ内務長官が就いた。マソン州知事はこの会議に欠席した。州知事は官邸から歩いて30分くらいのところにあるレストランで一人の女性ジャーナリストと食事に出かけた。彼女を州テレビのディレクターとして雇用するのが目的であった。
一般常識として理解できないのは、バレンシア県の多くの自治体が洪水になる危険性があるという中で、危機の指揮を執るべき州知事が対策連携会議を欠席して洪水とは全く関係のないことのために会食をしたという行動には誰も理解できないでいる。
15時30分:バレンシア県のワインの産地ウティエル市とレケナ市では洪水が始まった。この時点から洪水の被害を最小限に食い止めるには時はもう既に遅しであった。即ち、早朝7時半過ぎの洪水警報が出た時点から8時間後に最初の洪水が始まったのである。
17時:州政府は「連携作戦センター」を開設して軍の緊急部隊、水園連盟などのそれぞれ代表が出席した。マソン州知事はまだ会食から戻っていない。
18時43分:フッカル川水園連盟はポーヨ水溝の流量が1秒当たり1686m3まで上昇と州政府に伝えた。その10分後には2282m3まで上昇。もうこの時点ではポーヨ水溝が流れる水は完全に氾濫して近郊都市は全て洪水に見舞われた。
マソン州知事が会食から戻って来たのは18時30分だった。即ち、3時間以上も会食をしていたことになる。その間、彼の電話は受信拒否となっていた。だから、「連携作戦センター」を指揮していたサロメー・プラダ内務長官が何度も彼の携帯を呼び出したが繋がらなかったという。
ここでも二つの怠慢を観察できる。彼が会食しているレストラン名は分かっている。ではなぜそのレストランに電話をしなかったのか。事態は緊急を要する状況であるのに携帯を受信拒否の状態にし、しかも3時間以上もかけて会食をするという州知事の行動は人道を逸脱している。