サンチェス首相の指示に抵抗することもなく従ったマルガリタ・ロブレス国防相とマルラスカ内務相の罪は重い。皮肉なことに、この二人国防相と内務相はもととも出身が判事だ。事を裁く人間にしては正義感に欠けた。

同様に、マソン州知事も29日に緊急部隊の出動を中央政府に要請すべきであったが、それをやっていない。要するに、この5人の政治家が事態の深刻さが全く分かっておらず、また被災者を思う気持ちがなかったということだ。彼らは別世界に住んでいるということだ。これは多くの国の政治リーダーによくあることだ。

以下の事態の発生と時刻は11月10日付「エル・コンフィデンシアル」から引用した。

12時07分:フッカル川水園連盟はポーヨ水溝が1秒当たり264M3を記録し、流量が増加する可能性ありとした。ポーヨ水溝はバレンシア市郊外の複数の近郊都市を流れているので、この水溝が氾濫すればバレンシア市郊外の複数の都市が瞬時にして洪水に見舞われる可能性が高くなっていた。

ところが気象庁は、午後から雨量は次第に減少して6時頃には雨量は鎮まると州政府に報告していた。

12時23分:バレンシアの中央政府代理人は中央政府傘下のフッカル川水園連盟の報告に従って州政府の内務長官サロメー・プラダ氏に事態が深刻な様相を呈するようになっていると伝達。それは気象庁の午後には雨量は鎮まるという予報と矛盾していた。

13時30分:フッカル川水園連盟はバレンシア県を流れる3つの川と川溝の水位の急激な上昇をバレンシア州政府に警告した。

14時:各自治体は州政府からの警告を住民に伝え外出を避けるように警告した。ところが、この警報が一般の住民には十分に伝わっていなかったようだ。この時点で各自治体が厳重にそれを住民に通達していれば住民は車を安全な場所に移動していたであろうし、家屋、商店、倉庫などに水の侵入を防ぐべく工夫をしていたはず。ところが、住民はこの時点ではまだ日常の生活を続けていた。この時点が今回の大惨事を招く前の最後の分岐点であった。