石油成分となる炭化水素を作るためには、起源物質であるメタン、炭素および水素が必要ですが、これらの物質は地球のマントルに豊富に存在しています。
炭素は二酸化炭素や黒鉛、マグネサイト、カルサイトなどから供給され、水素は水や鉱物中の水酸基から得られます。
また、この反応を進めるために必要な還元作用(触媒)は、マントルに含まれる酸化鉄(FeO)が担っています。
実際の実験では、下図に示す大型の高圧装置を使い、メタン(または炭素と水素)を起源物質として50気圧と1200℃の条件下で重合させて、複雑な炭化水素の化合物が生成されることを確認します。
この重合とは、小さな分子が化学反応によって繰り返し結合し、高分子と呼ばれる大きな分子を形成する反応を指します。
その結果、アルカン、アルケン、芳香族炭化水素など、自然の石油に含まれる成分が生成されました。
これにより、石油が無機的に作られるという仮説が検証されています。
また、冷却速度を変えた実験では、速度が遅いほど重い炭化水素が多く生成されることが確認されました。
これは、冷却速度が遅いと、分子がゆっくりと再配置される時間が増えるため、単純な炭化水素が結合して複雑で重い液体状の炭化水素(石油に含まれる成分)が生成されると考えられています。
これらの結果から、上部マントルの環境下では複雑な炭化水素が同時に作られる可能性が示されています。
無生物の地層(非堆積岩)で存在する石油?
無機起源説では、石油やガスの水平移動を否定しています。
通常、油田やガス田は地下の多孔質の岩石中に蓄積されますが、無機起源説では、これらの炭化水素はマントルから直接供給されると考えられています。