無機起源説は、地球のマントル内において、高温・高圧の条件下で石油の起源物質であるメタン(CH4)等が化学変化を起こし、より重い炭化水素(石油の成分)が生成されたとする考え方です。

下図に示すように、その炭化水素は、現在も地球のマントル内で自然に生成され、地殻を通じて上昇し、断層や割れ目を通って多孔質の岩石に吸収されて、油田やガス田が形成されると考えられています。

地球上では、火山地帯や活断層からマントル由来のヘリウムや二酸化炭素が放出されることが観測され、地球内部のガス成分の放出経路となっています。

この理論に基づけば、石油や天然ガスの蓄積は単なる地質現象であり、この地球内部からのガス放出プロセスの一環であるとの解釈です。

無機起源説では、従来の生物起源説とは異なり、石油資源が地球内部から供給されるため、より広範囲かつ深い場所にも存在する可能性があると考えられています。

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マントル層で生成された炭化水素を含む流体が地殻付近まで上昇して石油、天然ガスの貯留層を形成します。/ Credit : Vladimir G. Kutcherov et al., Reviews of Geophysics(2010)

 

無機起源説の根拠

実験室で石油の合成が再現できた!

無機起源説を支持する大きな理由の一つは、実験的な裏付けです。

最近まで、石油の無機起源説を受け入れる上での障害は、地球の上部マントルの条件下で複雑な炭化水素系を合成できる可能性を裏付ける、信頼性が高く再現可能な実験結果が得られていなかったことでした。

この説では、炭化水素の合成には、「十分な高温・高圧」、「炭素と水素の供給源」、「熱力学的に好ましい反応環境」の各条件を必要としています。

炭化水素は、地球のマントル内で高温・高圧の状態下で自然に作られることが確認されています。

具体的には、600℃から1500℃の温度と、20〜70気圧という圧力の環境で、炭化水素の分子が結びついて石油の主要な成分が生成されます。