内部留保が多い主な原因が、この①~④かもしれないということを考えたとき、過剰になり問題になるのは③④である。とすれば、過剰であれば問題があるこれらについて、問題を解決するために内部留保を減らせばいいのだろうか。内部留保を減らす、という対策は上策であろうか。

対策すべきは内部留保の多さではなく、その目的、つまり内部留保を使って蓄えた財産の配分の問題や現預金の多さではないだろうか。つまり、これらの問題は内部留保が過剰だからではなく、それらを元手に現預金などの財産をどう持つかという問題でだからである。

③についてわかりやすく言えば、事故や環境悪化などのリスクに対応するために必要なのは、内部留保ではなく、現預金であると言えばいいだろうか(先に述べたコロナの時のことをお考えいただければいいかと思う)。

もう少し言えば、もし経営者が、事故や環境悪化などのリスク要因に対応するために現預金をいっぱい保持したいと考えたとき、借金してまでしようと思わないかもしれないが、増資により財産の総額を増やし現預金を増やすこともできる、それができないとすれば、内部留保を減らさずに固定資産や株などへの投資を減らし、現預金を確保することになるかもしれない。

また、④の放漫経営により内部留保が過剰になるケースについても、財産を有効活用していないことにより起こるわけで、これによって引き起こされるのは貸借対照表の左側の財産の配分(いかに投資に使うか)の問題であり、現預金を有効な投資に向けれなければ内部留保を減らしても改善はしない。

さてこれでわかるように、財産面に関して内部留保の過剰を問題にしてこれを減らそうということの本質は、財産の有効活用ができていないということであるが、これの対策のために、内部留保の側から対策しても(減らしても)改善はしない。

とすれば、なぜ現預金の問題だとか、放漫経営を隠すための総資産過大だ、とストレートに言わず、リスク対策などと表現を誤魔化し、内部留保が多いと言って問題を隠すのだろうか。