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先日、なぜ多くの人が内部留保が悪いというのかわからない、という投稿をした。

(前回:どなたか内部留保は何が悪いのか教えてください)

内部留保については前回述べたように、現預金や固定資産などの「財産面との混同」と人件費や法人税などの「費用面との混同」の2側面があるが、今回はこの財産面、特に現預金との混同について書いてみたい。

実は先の投稿に対して、あるコメントをいただいた。

そのコメント主の方は、

「新規の投資機会に素早く対応するためにも、事故や環境悪化などのリスク要因に対応するためにも、社内に一定の金額を積み立てておくことは悪いことではない」

とおっしゃっていた。これは、「内部留保増≒リスク対策≒現預金確保」というような誤解を生みかねない表現である。

コメント主様はすべての内部留保が現預金だとおっしゃっているわけではないし、たぶん私の真意はご理解されていると思うのだが、さらっと読むと、私が先の投稿で問題にした「内部留保増と現預金増を混同」したようにみえる表現である。

多くの投稿に意義あるご意見をコメントされているコメント主様を非難するつもりはまったくないのだが、コメント主様も私の問題提起に対してこういう表現をされるということは、私以外のすべての方かもしれないが、ここの部分がかなり大きな財産面の誤解原因なのではないかと思い始めた。

※ 私はfacebookをやらないのでコメントに返信できず、コメント主様にお礼ができずこの場を借りてお詫びいたします。

先日、私の投稿を息子の知人の経営学部生に見せたら、「内部留保という単語が、会計用語ではない都合のよさを優先してできた単語であるがゆえに、現預金が多いという表現の代わりに内部留保が多いという混同された使われ方になっているのだろう」と、正しくはあるが身も蓋もない話になってしまった。

ではあるが、やはり私はここに警鐘を鳴らしたい。でないと、何が問題なのか見えなくなってきて、減るとは限らないのに現預金を減らすために内部留保に課税しよう、などというおかしな議論になってしまう。