これには呼吸リズムを自発的に生成する役割があり、たとえ息を止めていたとしても、一定のリズムを刻み続けます。
つまりこれは、「脳内にある呼吸のペースメーカーのような存在」であり、私たちが呼吸をしていない時でも動き続けて、私たちが呼吸をするように促しています。
3つ目の安全システムは、頸動脈と大動脈に存在する「化学受容器」です。
これは血液の化学組成を感知する細胞群であり、体内の酸素と二酸化炭素のレベルを監視(特に二酸化炭素の変化に敏感)しています。
私たちが息を止めると、体内の酸素レベルが低下し、二酸化炭素レベルが高まるため、これらに反応して呼吸を促す信号を脳に送ります。
4つ目の安全システムは、「肺の膨張と収縮を感知する受容体」です。
これは肺の動きを直接監視しています。
私たちが息を止めることで、受容体が肺の伸縮を感知しなくなると、呼吸を促す信号を脳に送るのです。
ここまでで4つの安全システムを紹介してきました。
私たちが息を止めると、これらのうちのいずれかが異常を感知し、呼吸中枢を通して、肺に呼吸をするよう指示が出されるのです。
これらの反応は私たちの意思で制御できるものではないため、意識を失うまで息を止め続けることはほぼ不可能です。
しかし、このような安全システムが備わっているにも関わらず、それらを無視するような例外もあります。
安全システムを無視する「例外」
人間には呼吸を維持すための安全システムが備わっています。
しかし、一流のダイバーは、訓練によってこれらのシステムを無視することができます。
実際、2014年には、ある男性が約12分もの間、息を止め続けることに成功しています。
ウィンザー大学のベイン氏は、このようなダイバーは十分な訓練によって、「化学受容器から送られる信号を無視できる」と述べています。