では、スーパーストア事業はどうか。セブン&アイ傘下での再生はかなり難しい。従業員たちの士気が低下しているからだ。要因は3つ。

1つ目は、イトーヨーカドー従業員たちが、セブン&アイの行った「雑な」そごう・西武売却劇を目の当たりにしていることである。

取引先への無配慮、現場への無理解、そして従業員軽視。ストライキを誘発させた挙句「ストに屈するのは時代錯誤」と発言する取締役までいたという。そんなトップのもとでやる気を出せる従業員はどれほどいるのだろうか。

2つ目は、さらなるリストラが予想されることである。

セブン&アイは、今期の決算説明で、スーパーストア事業(首都圏SST事業)の指標値に「労働分配率」を採用している。

労働分配率とは、営業総利益中どの程度を「人件費」が占めているかを示す指標である(※人件費÷営業総利益)。直近値は「39.1%」(24年第2四半期)。これを25年度までに約5%低下させ「34.0%」にすることを目標としている。

※ セブン&アイの計算方式。一般的には「人件費÷粗利(売上高総利益)を用いることが多い。

わざわざ「人件費」を分母とする労働分配率を用いるということは、人件費を下げることが目標、と考えるのが自然だろう。しかし、賃上げの流れに逆らい批判されることは避けたい。よって、個々人の給料は上げつつも、従業員数を減らす。つまり、さらなる「リストラ」を実施する可能性が高い、ということになる。

24年2月期のイトーヨーカドーをベースに算出した人件費削減額はおよそ「88億円」。平均給与及び一般的な平均給与比率を用いて計算すると、リストラ対象人数は1000人を超える(概算値 ※1)。

3つ目は、待遇の格差である。

24年5月、米セブンイレブン(7-Eleven, Inc.)の 取締役CEOジョセフ・マイケル・デピント氏の報酬が「77億円」だったことが報じられた。これは、日本で報酬開示が義務付けられて以降、2番目の高額報酬である。