セブン&アイの設立者である故・伊藤雅俊氏は、イトーヨーカドーで買い物をすることが多かったらしい。

ある日、天ぷらの材料にキスを買う。揚げてみると驚くほど塩辛い。店に問い合わせると「塩辛いのは、塩水解凍だから」だという。またある日、アジの干物を買ってみる。食べると、味が今一つ。店に聞くと「味が落ちるのは、天日乾燥ではなく電気乾燥機だから」だという。

これは答えではなく言い訳だ。

伊藤氏はこう断じる。こんな塩辛いキスを買った客は、二度とその店で買ってくれない。理屈をこねるのではなく、塩辛いキスや美味しくない干物を食べた客がどう感じるか、想像できる豊かな感性が必要である、と。

では、これはどうだろう。「弁当が上げ底」というネットの指摘についての回答である。答えているのは、セブン‐イレブン・ジャパン社長の永松文彦氏だ。

「電子レンジで温めたりするアレがありますから。多少は(弁当に傾斜が)ないとダメなんですよ。じゃあ、スーパーとか他のところ見てご覧なさいよ。どっちが上げ底かと。あれはルールで、何パーセントって決まってるんですよ」

「本当にそうなってました? 上げ底になってましたか? 他と比べて本当にセブン-イレブンが上げ底になっているのかって言うのをご覧になりましたか? なってませんでしょう?」

セブン社長に「上げ底弁当」疑惑を直撃「そんなアコギなことはできない」「ネットに投稿する方は、事実をもって投稿してほしい」 | 文春オンライン

上げ底ではなく、レンジで温めるための傾斜。ルールがあるから、上げ底にするわけがない。間違っているのは客の方、と言わんばかりの回答だ。理屈でいえばそうかもしれない。だが、客はこの商品をどう思ったのか。この回答をどう受け取るか。それらを想像する感性に乏しくないか。

上げ底が話題になるのは、顧客が弁当の量に「敏感」になったということ。コスパ意識が高まったことを意味する。それに気づかず、このような回答をしてしまうほど経営陣は「鈍感」だった。結果、価格対応が遅れ、セブンイレブンは