その結果から、安倍派(清和会)の裏金問題については、以下のような事実が把握できた(【「政治資金パーティー裏金問題の核心」に迫る~始まりは“マネロン”だった】)。
(ア)所属議員のノルマ達成のためのインセンティブとして導入されたのが、「還付金」「留保金」であり、その販売実績が、派閥内での評価につながっていた。実績に応じてノルマをどの程度に設定するかは、派閥会長を中心とする派閥幹部の匙加減によって行われていた。
(イ)派閥から所属議員に対するノルマ超の売上の供与については、かつては、派閥から一度自民党本部へ上納し、党本部から合法的に「収支報告書への記載も領収書も不要な政策活動費」として所属議員側に供与する「マネーロンダリング」が行われ、その後マネロンのプロセスは省略されるようになった。
これらの事実は、「裏金問題」の本質に関わるものであり、今後、この問題の解決、制度の是正を考えていく上でも極めて重要である。
まず、(ア)は、ノルマの設定が、派閥幹部の匙加減によるものであり、それが、派閥幹部の権力維持にもつながっていたということであり、だからこそ、ノルマの金額や、その設定の結果としての還付金等の金額は公表しないこととされていたと考えられる。
そして、そのような還付金等の所属議員への供与が不透明な裏金として行い得たのは、「政策活動費」という形で政治資金の収支報告書による公開の例外が設けられていたためであり、それが、巨額の裏金処理の源流になっていたということなのである。
つまり、議員個人に関わる金の流れの不透明性と、それが派閥幹部等の権力の源泉にもなっていたことが、問題の本質なのである。
「政治家個人宛の違法寄附」ととらえる方向で捜査処理すべきだったそもそも、「収支報告書に記載不要」との説明は、「収入について収支報告書への記載が義務づけられている資金管理団体・政党支部・国会議員関係団体等に対する寄附ではない」という趣旨を含むものであり、「収支報告書への記載義務がない議員本人に対する寄附」と解するのが合理的である。