しかし、国民の認識や期待と事件の結末との間に著しい乖離が生じたことに対する不満や批判の大半は、裏金議員や自民党に集中し、それが総選挙での惨敗につながった。一方の検察に対しては、SNS上などで捜査処分が自民党議員に生ぬるい、政権に忖度したなどとして批判する声もあったが、ごく一部にとどまった。
1月19日に行われた刑事処分で捜査が終結して以降、通常国会予算委員会等で、野党側は、裏金問題の事実解明がほとんど行われていないこと、裏金議員が全く納税を行っていないことなどについて、政府、自民党側を厳しく追及した。それに対して、岸田首相は、
「検察当局が厳正な捜査をした結果」
であることを強調した。つまり、岸田政権は、「検察の捜査」を「盾」にとって批判をかわそうとしたのである。しかし、批判は一向に収まらなかった。「検察捜査」は盾になるどころか、「裏金議員が処罰されず納税もしない」という結果を招いたことで、批判に燃料を投下し続けることになっただけであった。
問題は、岸田前首相など、政府与党側が全面的に依拠していた「検察の捜査処分」とそれに基づく所得税納税についての対応が正しかったのかどうかである。
裏金議員は「収支報告書不記載・虚偽記入罪」では処罰困難だった私は、かねてから、政治資金規正法には、「政治家個人が受領する裏金」の処罰が困難だという、「ザル法の真ん中に空いた大穴」の問題があることを、2021年2月の当欄の記事【政治資金規正法、「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか】、2023年の拙著【“歪んだ法”に壊される日本 ~事件・事故の裏側にある「闇」】などでも指摘してきた。
今回の「派閥政治資金パーティー裏金問題」についても、派閥から所属議員にわたった「裏金」について、国会議員の資金管理団体や政党支部の政治資金収支報告書の不記載・虚偽記入罪を適用する方向での捜査自体が間違いであることを繰り返し指摘してきた(【「ザル法の真ん中に空いた大穴」で処罰を免れた“裏金受領議員”は議員辞職!民間主導で政治資金改革を!】)。