このうち、(1)の「裏金議員の処罰」の現状は、すべて検察当局が捜査を行い、その結果、刑事処分を行ったものであり、検察の判断の結果である。

(2)の所得税の納税についても、「還付金」「留保金」を「政治資金収支報告書に記載しない」前提で受領し、そのまま議員個人が保管していた事例もあったことが自民党のアンケート調査で明らかになっており、常識的に考えれば個人所得で、税務の専門家は「個人的な費消の有無に関わりなく、政治資金収支報告書に記載しない金として派閥からの供与された金は、全額納税が当然」との意見であるが(【政治資金パーティー裏金は「個人所得」、脱税処理で決着を!~検察は何を反省すべきか。】)、議員側には納税に向けての動きはなく、国税当局の税務調査も行われていない。

それは、検察当局が、派閥から所属議員に供与された金は政治団体(政党支部)に帰属する政治資金であり、政治資金収支報告書に記載すべきであったとして、収支報告書の訂正を行わせることで事件を決着させたからだ。

それによって、原則として議員個人には帰属しなかったことになり、それを個人的な用途に使った事実が具体的に明らかにならない限り(議員個人が保管していても)、所得税の課税の対象にならない。しかも、原則として所得税の納税義務も申告義務もない、ということであれば、「政治活動に使った」とだけ説明すれば済み、使途を明らかにする必要もないということになる。実際に、殆どの「裏金議員」の説明は、その程度のもので済まされてしまった。

もし、議員側が所得税の納税を行えば、検察の認定に反する対応ということになる。検察OBの高井康行弁護士がBS番組で

「仮に、キックバックされた、政治団体にキックバックされたものを私はこれ個人的に全部雑所得として申告しますなんていうことをやったら、検察に喧嘩を売るのかと。検察は、政治団体に帰属していると言っているにもかかわらず、これは個人所得だということだから検察の認定を争うことになる。」