これらは「動かないスフェロイド」と分類されています。

下図のカラーの画像は、0日目と7日目のスフェロイドの染色結果です。

繊毛(黄色)、細胞間の結合状態(赤色)、および核(青色)の外表面と断面の様子が示されています。

7日目には、スフェロイド表面の繊毛(黄色)の量が大幅に増加しているのが分かります。

この繊毛は、運動を行うための大切な要素になっています。

繊毛が自己組織化して形成されることで、まるで生命を持ったかのように動く「生体構造」が完成されるのです。

この研究が示すのは、ヒトの細胞が自律的に構造を作り、さらに運動能力を発揮する驚異的なメカニズムです。

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自己組織化が進んだ7日目のスフェロイドの画像 / Credit : Gizem Gumuskaya et al., Advanced Science(2023)

以下、「動くスフェロイド」をアンスロボットと呼びます。

下記の動画では活発に動き回る7日目のアンスロボットが確認できます。

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活発に動き回る7日目のアンスロボット / Credit : Gizem Gumuskaya et al., Advanced Science(2023)

アンスロボットの行動特性、修復機能について

この研究では、アンスロボットの形や動きについて調べています。

研究者たちは、350個のアンスロボットの3次元データを集め、その形や繊毛の配置について詳しく分析しました。

繊毛の配置としては、タイプ1(小さく形が滑らかで、球形に近い繊毛の分布)タイプ2(形が不規則、繊毛が多くて全体的に均一に分布)タイプ3(繊毛が特定の場所に集中して偏った分布)があり、全ての種類の形状についてはあまり変わらないことが分かっています。

アンスロボットの活動については、「動くもの」の中から「直線的に動くもの」と「円形に動くもの」各々をランダムに選び、各アンスロボットの左右対称性を比較しました。

結果としては、直線的に動くアンスロボット(その85%がタイプ2)は高い左右対称性を持ち、円形に動くアンスロボット(その88%がタイプ3)は左右対称性が低いことが確認されました。