後者は、タイプ3の形状から、繊毛の回転運動に偏りが生じて活動時に左右非対称性をもたらす可能性を示しています。
また、ヒトの神経細胞から作られた細胞層に幅400〜1,000ミクロンの傷を付け、その上をアンスロボットがどのように動くかを観察しました。
その結果、円運動をし、かつ動きが速いロボットの方が、直線的に動くロボットよりも傷の中でユニークな動きをし、傷全体を効果的に覆うことが分かりました。
この結果を踏まえ、アンスロボットが周囲の細胞にどのような影響を与えるのかを確認してみることにしました。
自然界では、個体が群れとして集合的に行動することで利益を生み出す「群知能」といった現象があります。
これに着想を得て、複数のアンスロボットが自然に集まって融合し、より大きな構造を形成する「スーパーロボット」を作ることにしました。
特別な型や機器を使わず、単に小さな皿の中に複数のアンスロボットを入れることで自発的に集まるようにしました。
これは、アリが体を繋げて橋を作り、広い隙間を渡る行動に似ています。
試験では、このスーパーロボットを傷ついた神経細胞層の隙間に配置し、彼らが左右の傷をまたいで「橋」のようにつなげて、傷ついた部分が修復されるかどうかを確認しました。
図Aは、スーパーロボットを配置した当日の様子ですが、上から、0日目、1日目、2日目で「橋」がつながった状態(黒っぽい部分)を示しています。
拡大した図Bでは、驚くべきことにスーパーロボットを傷の中に置いてから72時間以内に、元の組織の大幅な再生(すなわち、隙間を閉じること)が観察されました。
すなわち、「スーパーロボットの橋」のすぐ下に、傷の両側(紫色)をつなぐように「縫い目」(緑色)が形成されたのです。
但し、この隙間を閉じる現象は、スーパーロボットを配置した箇所でのみで確認され、そうでない箇所では長い傷全体を覆うような修復は見られませんでした(図C) 。