試験手順は、以下の通りです。

研究チームは、まず気管支上皮細胞を特定の培養条件下で育て、その細胞がどのように自己組織化するかを観察しました。

このプロセスでは、細胞間の伝達機能を重視し、特定の信号や物理的な力が細胞の運動能力にどう影響するかを検証しています。

次に、気管支上皮細胞から筋肉組織に似た構造を作り、その構造が自発的に収縮、弛緩し、運動を行うかどうかを確認しました。

これには、細胞がどのようにして収縮、弛緩を行うか、その運動が周囲の環境に対してどのような影響を与えるかが重要なポイントとなります。

下図は、気管支上皮細胞が、多細胞で運動能力を持つ生体構造を自ら構築していくプロセスです。

通常、繊毛は細胞の表面に存在しますが、この試験では細胞の内面にある繊毛の配置を変えるために、粘性の低い培養環境下で細胞の表面に移動させようとしました。

以下が、気管支上皮細胞の内面にある繊毛が表面を向くように誘導するプロセスです。

まず繊毛のない球体を作り、細胞同士をつなぐネットワークである細胞外マトリックス(ECM)の中で14日間培養します。

このプロセスが14日間続いた後、成熟したスフェロイド(球状の細胞集合体)をECMから取り出し、粘性の低い環境に移してからレチノイン酸で細胞の分化を促進させ7日間培養します。

ようやく、7日目に細胞の表面に繊毛を持つ運動機能のある球体のスフェロイドが完成しました。

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気管支上皮細胞を用いた培養試験の手順 / Credit : Gizem Gumuskaya et al., Advanced Science(2023)

自律的に組織化していくアンスロボット

下図は、ECMから取り出した直後のスフェロイドと、取り出してから7日後のスフェロイドの画像です。

0日目のスフェロイドは運動性を示しませんが、7日目のスフェロイドは運動性が大幅に増加していました。

スフェロイドがECMから取り出された後の3週間で、全体で2281個のスフェロイドが観察されましたが、そのうち約50%はその大部分に繊毛があるにも関わらず、3週間の間に運動性を示しませんでした。