2022年2月24日以降のロシアの「全面侵攻」の「侵略(aggression)」としての違法性については、国連総会決議で141カ国の多数国の賛成票を得ている。国際司法裁判所(ICJ)がジェノサイド条約に基づく訴えに対して、ロシアの軍事行動の停止を求めてる仮処分措置の命令を出したことがある。したがって違法性の疑いは相当に濃いことが、国際社会の権威的な機関によって、示されている。ただし法的措置をとるために十分な根拠となる結論と言える権威的な決定は、まだなされていない。全ては、ウクライナへの支援は、諸国がそれぞれの責任において行う国際法の解釈判断にもとづきつつ、政治的判断で行っていることである。もしロシアが資産凍結の違法性を訴えてきたら、侵略の違法性のところから双方に証明義務がある法廷闘争が起こることになる。

そもそも「一方的制裁」そのものが、国際法上の合法性については、曖昧模糊としているものでしかない。むしろ基本的な一般論を言えば、第三国が、国連安全保障理事会決議などの法的根拠がないまま、他国に侵害を与えることを狙った措置をとることは、違法である。したがって違法性を阻却するための論拠がなければ、現在G7諸国が行っている「制裁」措置は、合法ではない。

違法性阻却の論拠は、国連憲章2条4項武力行使の禁止(侵略の禁止)が、全ての諸国にとって重要な「対世的(erga omnes)」な規範であり、「強行規範(jus cogens)」と呼ばれる普遍的に適用される規範である、という理解に、依拠せざるをえない。このこと自体は、論証を必要とするが、広く認められてはいる点ではある。だがさらに、この「強行規範(jus cogens)」の規範からの逸脱を理由にして、第三国が、自国に直接的な損害を与えているわけではない他国に対する「一方的制裁」を加えることができるかについては、明白には合法だとは証明されているわけではない。具体的な案件で見定めていかなければならない事項だと言える。国際法廷で争われて確定的な結論が出た前例がなく、国際法学者の間でも意見が分かれる。大勢としては、合法性は不明、である。