今回の事例については、融資なのでウクライナに返済義務があるのが基本だが、それが果たされていると信じている者がいるようには見えないのが、一つのポイントである。そのような能力があるかを問う前に、そもそもウクライナ政府に、こだわっている様子がない。強烈な態度で支援国を批判し続けて、さらなる無償の武器提供その他の援助の提供を要求し続けているのが、ウクライナ政府である。日本のようなウクライナ支援国は、ウクライナの債務の返済保証国でもある。まして債権国は、いざとなったら借金の返済の肩代わりにロシアの資産を使うと言っている。ウクライナ政府が、債務返済を確約しないのは、当然だろう。

ウクライナが戦後に画期的な復興と経済成長を果たして返済能力を持つようになる未来を、ウクライナ政府も支援国も、排除したいわけではない。だから言わない。しかし可能性が低いことを知らない者はいない。そうでなければ、債権国が債務保証国になるはずがない。

凍結したロシアの資産を用いるので、支援国側の納税者に負担がない、という説明は、もちろん当事者であるロシアは認めていない。G7側が、一方的に主張して実施してしまっていることである。将来、ロシアが返済をG7側にも求めてきたら、それだけでも「将来世代」に負担が生じる。ロシアとの外交関係の恒常的な悪化の確定が、「将来世代」に対する政治的・経済的・文化的負担になることも付記しておかざるをえない。

もちろん国際法上の根拠が確定しているのであれば、ロシアの要求を気にするべきではない、ということになるだろう。しかしもちろん、言うまでもなく、G7諸国の決定なるものには、国際法上の効力を発する意味はない。そもそも、G7諸国は、第三国でありながら実態としては事実上の交戦国に近いウクライナ支援国グループなので、今回の措置も第三者が国際法に則って粛々と行った措置というよりは、ロシアに対する敵対的な行為であることを知りながら、むしろ戦争の一環として行っている措置であるという色彩が強くなっている。いずれにせよG7諸国の合意であるという点に、合法性を担保することができる要素はない。