すなわち①誰かに必要とされる、②生きるよろこびは緊張を伴う真剣さから得られる、③まずは一つの役割活動から始める、④好奇心をどこに感じるかを自分で決める、⑤自己実現かコミュニケーションかを選択する、⑥夢中になれるものがあるかを問いかける、⑦自分の引き出しをたくさんもっているかを自問する、⑧家族、近隣、友人、緊急通報システムのうち、安心感を何で得るかを考えておく、⑨人生の再出発では、男は内(厨房)に、女は外(街)にからが大原則である、⑩働かない自由=新有閑階級の存在も認める。

これらの条件のうち、⑩以外では、とりあえずは「地方創生」に積極的な関心をもってもらい、それに好奇心が刺激される事業対象のなかに自分の役割が発見できれば、生きるよろこびが強まり、安心感も得られる。

未曽有の高齢化率30%台が20年間は確実に続く時代に突入した現在、以上のような高齢者の価値意識、ライフスタイル、ライフヒストリー、「得意」などへの配慮もまた、「まち、ひと、しごと」の「地方創生」分野において積極的に行い、総力を挙げて先行き不透明な時代に対処していきたい。

注5)私なりの「高齢者の生きがい」研究は金子(1993)で開始して、最終的には金子(2014)でまとめている。 注6)instrumentalは道具的で手段的な特性を示し、expressiveとは表出的で自己顕示的な特性を表わすパーソンズ(1951=1974)の用語である。 注7)これらの概念規定については金子(2019:248-251)に詳しい。 注8)金子(2014)では、質的調査の事例として、テーマごとに数名の高齢者インタビューによる「ライフヒストリーの記録を掲載した。「信仰と趣味が生きる張り合い」4人、「加齢を楽しむ」3人、「多忙な毎日は健康から」4人、「家族が人生の支え」7人の貴重な記録である。

【参照文献】

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